恋のはじまりは世界のおわり。呟いたら、なにそれって顔をされた。
「ネガティブ!」
理奈は眉を寄せて私の仏頂面を覗き込む。無邪気な瞳が憎い。
「だいたい寧子は消極的すぎるんだよ。アタックしなきゃ可能性すらないじゃん」
「できないんだもん」
「できるできないじゃないの」幼い子供に語り掛けるように。「やるかやらないかなの」
じゃあ、と私は理奈を肩から押し倒し無理やりキスをした。凍り付いた表情を愉快さをもって見下ろす。
――なんてことをする勇気があれば、それはそれで楽なのかもしれない。
いつも、思うだけ。
ぼんやりと宙を見つめていると理奈は激励の言葉を浴びせかけてきた。板挟みにされる私。
「私は応援するからさ……とりあえず、誰が好きなのか教えて?」
同類の友達だっているしその気になれば出会い系にでもビアンバーにでも繰り出せる。なのに好きになるのはことごとく、望みのない相手なのだ。
「やだ」
恋なんてしたくない。わざわざ苦しみたくない。でも理奈の言い回しを借りるなら、したいしたくないじゃなくて、なるならないの話なんだろう。
誰が考えたのか知らないけど、恋に「落ちる」って表現は皮肉なまでにぴったりだ。戻れない抗えない逆らえない。もしかして、と気づいた瞬間にはもう遅い。
「……いじわる」
あなたがいるのに幸せじゃない。あなたがいるから幸せじゃない。世界の終わりへ続く道を、あやうい足取りで歩いてく。
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