失恋したんだって。わあわあ大声を上げて泣いている。わたしの制服のシャツに染みを作りながら。背中に爪を立てながら。
「死にたい……」
言われても、困る。こっちまで悲しくなる。みゆきはひとにやるせなさを与えるのがとても上手だ。その迷惑な特技のせいでわたしがどれだけ苦労したか、……思い出すだけでそれこそ、死にたくなる。
わたしはいいひとになれなかった。みゆきが幸せ絶頂だったそのとき、この世のすべてを憎むかのように眉をひそめて舌打ちをしていたのである。そしていま。
体温に肌の柔らかさ、汗と涙のにおい、セーラーから伸びる太腿、か細い声。ひとつだけ、足りない。――五感に。
あ、と気付いた瞬間にはもう遅い。身体の底からじわじわと込み上げてくるものは、みゆきの髪を撫でる手に緊張をはしらせた。みゆきの腰に腕をまわしてぐっと引き寄せる。驚くほど細い。いいように解釈してくれたのだろう、みゆきはいっそう声を張り上げた。
唾を飲み込む。舌が、疼いていた。頬に指を滑らせると、みゆきの表情はわかりやすくはりつめる。
幸福と不幸が交差した日。あなたはきっといつまでも覚えている。
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